コロナ禍でも過去最高益に並ぶ利益確保。進化し続けるブランドのEC変革を探る
  • ECサイト構築
  • OMO・オムニチャネル
  • EC運用業務支援
  • ECサイト構築
  • OMO・オムニチャネル
  • EC運用業務支援

コロナ禍でも過去最高益に並ぶ利益確保。進化し続けるブランドのEC変革を探る

アパレル業界が不況にあえぐなか、コロナ禍というさらなるマイナス要因が業界を襲いました。株式会社ゴールドウインも2020年春には直営店の大半を臨時休業としながらも、秋以降には息を吹き返し、2021年3月期連結業績では、過去最高益だった20年3月期とほぼ同額の利益を確保。アウトドアウエアが、日常にも浸透しつつあるなかで、「THE NORTH FACE」ブランドを筆頭に業績を伸ばしています。2020年7月にリプレイスした公式ウェブストアも好調。今回、リプレイスを陣頭指揮したシステム部 ITストラテジーグループの冨田良介氏にお話を伺いました。
株式会社ゴールドウイン

株式会社ゴールドウイン

経営企画本部
システム部 ITストラテジーグループ
リーダー 冨田 良介 様

課題山積のEC事業。取り組んだのは「オムニ会議」

―ECシステムリプレイスのコンペが2019年の春でした。冨田さんは、その少し前にゴールドウイン社へ入社されたと伺っていますが、それまでのご経歴と合わせて教えていただけますか?

冨田様(以下、冨田):当社に入社する以前は、外資系の総合広告代理店でデジタル開発案件のプロジェクトマネージャーをした後、アパレルメーカー、消費財メーカーでのEC事業責任者を経て、2019年1月にゴールドウインに入社しました。現在はデジタルの取り組み全般に関係する各プロジェクトに参加しています。自社ECシステムのリプレイスは入社してすぐに着手した大きな案件でした。

ゴールドウインに入社する前の面接の段階から担当する複数の大きなプロジェクトの存在は告げられていましたが、なかでもECシステムのリプレイスが最も重要度が高いプロジェクトに設定されていました。

―当時、貴社のECではどういった課題があったのでしょう。

冨田:解決すべき重大な課題は、実はとてもたくさんありました。トピックだけ並べてみても、インフラ環境の脆弱性、予約販売などECサイトにおける実装品質や販促機能の不足、システムアップデートの遅れ、UX/UIの改善、その他バックオフィス側でも顧客データベースの使い勝手の改善や管理画面の運用環境も改善の余地がありました。短期的に実行できる改修環境も整っておらず、課題は山積していました。

当社は2025年に向けた戦略として、EC化率を30%に設定しています。私の入社当時の状況からは飛躍的に伸長する必要があるラインなので、目標達成に向けた大規模な環境改善は急務でした。

課題が多くあるなかでも特に重要な課題として位置付けていたのが、オムニチャネルの強化です。これは全社課題としてプロジェクト化されており、私も入社してからプロジェクトのファシリテーターとして携わっていました。

―ファシリテーターとしての冨田さんの役割とは、どういったものだったのでしょうか。

冨田:オムニチャネル強化に関わる関係部署(販売部、マーケティング部、システム関連部署、店舗スタッフなど)の担当者を一同に会した通称「オムニ会議」というものがありました。通年で頻繁に開催されていて、私はそこでファシリテーターをしながらアジェンダ定義や自分の意見や世の中の事例を参加者に伝えつつ参加者の意見も引き出す意見集約、合意形成を図るということを行っていました。

この会議には顧客視点に強い人もいればEC業界のトレンドに強い人、ITリテラシーが高い人もいれば運用視点で有益な意見を出してくれる人もいたりと、いろいろなタイプが参加していたので、議論はいつも活発でした。各担当者が日々感じている課題や、それこそ切実な「こうして欲しい」という要望、例えば客注時にポイント連携ができないという課題など、多くの生の声をたくさん聞くことができて、私にとってとても意味のある時間でした。私が思いつかない意見も出るので刺激もあり、普通に楽しかったですね。入社当初は私の中でぼんやりとしていたゴールドウインが取り組むべきオムニチャネルの形というものが、会議を重ねるごとに次第にクリアになっていったのをよく覚えています。

―冨田さんが見た、貴社におけるオムニチャネル化とはどのようなものだったのでしょうか。

冨田:さまざまな意見を検証するなかで、特に「客注サービスの充実化」を強化ポイントのひとつとしました。注文方法の選択肢数や出荷の方法、在庫連携やID連携、ポイント付与の在り方、それらを包括するシステム管理の実装方法など、繰り返し議論を重ねて精査しました。お客様に対するサービスの向上に直結する部分ですので、高い優先度にすることで重要課題である認識を共有しながら進めることを意識しました。ただ、ここで難しかったのが新しいことを始めながらも運用面の負荷が高いのは認められないということです。今回の新客注システムでは店舗スタッフが主に運用対応します。店舗スタッフは接客以外にも実は多くの仕事があり、一日のなかでもゆとりのある時間帯というのはほぼ存在しないので、彼らの負担にならないようなシステム実装を設計するのが難題でした。

パートナー企業に求めたのは、300以上ある要件への確かな理解

―2019年春に行われたECシステムリプレイスのコンペについても、お聞かせいただけますか?

冨田:コンペでは最終的にAMSさんに決まりましたが、検討スタートは数十社からでした。一次選考を経て、最終的に数社にプレゼンをお願いしています。オリエン時のRFPではオムニチャネル強化についての要件を重要課題として取り上げ、中心に据えてオリエンをしました。一方でそれ以外の必要要件も多岐に渡り存在し、要件リストとしては300項目以上でした。それは今回のリプレイスに対して全社から寄せられる期待値が表れた形になったのだと思います。

―そうしたコンペを経て、数あるベンダーの中から、なぜAMSをパートナーとして選んでいただけたのでしょうか。

冨田:評価したポイントは複数ありましたが、まず300項目以上ある要件に対して、最も実装率が高かったのがAMSさんでした。また、新しい客注サービスを管理するシステムに対しては実装方法をスクラッチでご提案いただいた企業もありましたが、スクラッチは自由度がある分、弊社側も膨大な要件定義を正確に行う必要があり、負荷が高くなります。その点、AMSさんは「PRAMS ORDER(以下、プラムスオーダー)」という完成された運用実績の豊富なオムニチャネルツールがあり、それをシステムに載せて部分的に改修していくことで弊社の希望が叶えられるという展望が見えました。

他に、アパレル業界の実績が多く、顧客管理システムの構築にも強みがあったこと。インフラ環境についても弊社で課題としていた、人気商品の販売時に起きる瞬間的なトラフィックの急増に対して、抽選機能を開発して対応する案を具体的に提案してくれました。

営業品質の点でも距離感がちょうどよかったですね。各社とはオリエンからプレゼンまでの間に個別ミーティングで認識のすり合わせを重ねましたが、AMSさんは杓子定規なところもなく、お互いに聞きたいことが聞ける雰囲気がありました。

私たちが求める要件を高い次元で実現できるという実感があったことに加えて、プレゼン自体もすごく良かったです。弊社のオリエンに対して、正確に理解していただけていると感じられました。

提案内容も、弊社側が理解しやすいように、構成や資料も揃えて、具体的に説明してもらえました。例えば、フロントはこういう挙動を起こしながらバックエンドでの処理はこうしてなど、手取り足取りといった感じで、デモ画面も示してもらいながらだったので、非常にわかりやすかった。

―だいぶ褒めていただいて、なんだか恐縮です。

冨田:コンペに参加した社内20名には、コンペ内容を採点する評価シートを事前に渡しています。これは定量評価と定性評価で構成されたオリジナル評価シートで、いろいろな立場の視点から多角的に評価できるように作ったものですが、ここの定性評価欄でも高い採点を受けていました。まさに定性的にも定量的にもAMSさんは高い評価を受けた結果となりました。

―当時、プレゼンの前にも何度も時間を作っていただいて、RFPの内容を細かく確認させていただき、一番重要なことを確認しました。その他についても大中小と項目分けをして、ゴールドウイン社が一番求めていることを、しっかりと満足いただける形で提案することを目標にしていました。

冨田:我々がやりたいと思う気持ちに、ハマってもらえている感覚がありましたね。

客注サービスの充実と、業務効率化の両立を実現

―2020年7月にサイトがリニューアルオープンしました。それから、1年以上が経過していますが、率直にどのように評価されますか。

冨田:まず数字面においては、AMSさんでリニューアル以降、当ECサイト売上は前年比120%以上で推移しています。また、オムニチャネル強化の一環として全社的な在庫流動を高めるために新たに導入した客注サービスの存在は大きいですね。弊社の店舗在庫とEC在庫の連携では、以前からEC のお客様からの要望で、ECの在庫を店舗に送り、お客様が店舗に取りに行く「店舗取り寄せ」というサービスがありました。他にも夜間の店舗閉店の時間帯に、店舗の在庫をEC在庫として扱う夜間在庫連携もやっておりますが、店舗とECの在庫流動化の取り組みはそれぐらいでした。

今回のリプレイスでは新しくふたつの客注サービスが加わりました。ひとつは「STAFF ORDER:スタッフオーダー」というサービス。これは店舗にご来店いただいたお客様の欲しい商品の在庫が店舗にない場合に、iPadのプラムスオーダーアプリを使ってEC在庫を引き当て、商品はEC倉庫から直接お客様のご住所へ発送するサービスです。お支払いは店舗でしていただくので、売上は店舗に計上される仕組みです。

もうひとつのサービスは「ECコレクト」というサービスです。先ほどのスタッフオーダーとは逆で、ECサイトに訪問されたお客様の欲しい商品がEC在庫に無い場合、ECサイト上から店舗にある在庫を取り寄せて申込み(代引き限定)ができるサービスです。取り寄せ申込み情報は、店舗にあるiPad(プラムスオーダーアプリ)端末上に通知され、その後のお客様とのやり取りや店舗側での発送業務は全てその端末で操作できるので、店舗側の負担も少なくて済みます。店舗側で直前に売り切れてしまった場合には、「在庫確保できません」という操作もできますので、店舗側も安心して使うことができます。

実は非公式ですが以前からECコレクトに似たサービスで、店舗へお電話で代引き発送のご注文をいただくケースがあったのですが、顧客照会をしないのでポイント付与ができないという課題がありました。弊社の商品は点単価が比較的高いので付与ポイントもそれなりのポイント数になる。非公式とはいえ、お買い上げいただく以上は公平性に欠けるという観点から、オムニ会議でも解決優先度の高い課題に位置付けていました。解決策として会員限定となりますが、マイページで入力いただく「ポイント後付けコード」という20桁のコードを発番して、レシートの一番下に印字する仕組みです。レシートは商品を発送する際に同梱されますので、お客様は商品を受け取ったら、マイページから後付けコードを入力すればポイントが付与される仕組みになっています。店舗にレシートなどを持っていかなくても、ポイント取得が可能になりました。

―客注サービスの課題として、従来は店舗スタッフが他店舗に在庫を電話確認したり、お客様にいろいろと用紙に記入いただいたりと煩雑な手間がかかっていましたが、「スタッフオーダー」ではiPad上でEC在庫を引き当てることができるので、業務効率の改善にもつながるのではないかと考えていますが、実際に導入していただいて、サービスの評価はいかがでしょうか。

冨田:業務効率化の効果はあります。iPadでの操作が非常に簡単で、お客様の入力も最小限ですし、UIを含めてかなり精査されたシステムだという印象です。店舗側も混乱なく運用できています。

サービスの評価で言うと、「店舗取り寄せ」と「ECコレクト」、「スタッフオーダー」の3つの客注サービスでは、「ECコレクト」が特に好評ですね。ECコレクト利用開始以降6ヶ月で、申し込み受付店舗数は4倍に拡大し、ECコレクトを経由した売上は直近の月で前年比200%、前月比でも110%を推移しており日々利用者も増加しています。それだけ、お客様のご要望にお応えできていることだと思いますので、少しホッとしてます(笑)

ちょうど時期的にはコロナ禍で、店舗を閉めていた事もあり、お客様の足も遠のいて店舗の在庫が減りにくい時期でもありました。その状況下で、「ECコレクト」によって店舗の在庫を減らすことができたことは、店舗側含め全社的に在庫流動性を高める事の必要性を認識してもらえる良い機会でもあったと思います。在庫流動性を高める事は、ともすると現場からは「困る」という声も聞こえがちですが、やはりマクロ的な全社の視点で見るととても大事なことです。今回のサービス導入で、そのような取り組みに対する社内の認識が深められたことは、私としても大きなミッションをひとつクリアできたかなという感触があります。

―今回のリプレイスでは、他にも「リペアサービス」の強化と、社員販売サイトの構築・運用も行いましたね。

冨田:そうですね。そこもサービスの向上という点で価値のあるスコープでした。「リペアサービス」の強化については、弊社ではお客様とお持ちの製品が長期間にわたり共に過ごす「ロングライフ」に力を入れていることもあり、以前から実現したい課題のひとつでした。これまで「リペアサービス」は、直営店まで製品をお持ちいただき、スタッフがリペアセンターに送り、リペア部分の確認、お見積もりなどの手続きを踏む必要がありました。

それをより効率的にする為に、web上でリペア申込みができる仕組みを作りました。お客様はマイページで必要事項を入力し、リペア希望箇所を撮影して画像を送っていただくと、リペアセンターの専門スタッフが直接確認し、見積もりを作成して、修理金額が合意されれば直接リペアセンターまで製品をお送りいただく。その後、修理して、製品を返送するというサービスです。Web上でやり取りが完結できることで、直営店の手間も省けますし、お客様にとっても時間の短縮になります。

社員販売サイトの構築については、直接お客様には関係のないことですが、やはり店舗にとっては少なからず業務負担が発生しますから、専用サイトを構築することで、業務効率の改善につながったと思います。

―ゴールドウインの課題をヒアリングするなかで、作業改善、業務効率化は課題としてクリアしなければいけないと思っていました。その点が解消されたということは、私たちとしても安心しました。

求めていた、協業のできるベンダー像

―それにしてもリプレイスに至るまで、最後の期間はAMSのメンバー数名が貴社にお邪魔させていただいて、確認事項を擦り合わせたりと、冨田さんもお時間のないなかでご対応いただきました。

冨田:いや、こちらとしても運用チームなど現場メンバーに寄り添っていただき感謝しています。チャットではうまく表現できないことも直接会話して解決できたり、運用方法もその場でレクチャーしていただいたりと、本当に助かりました。ベンダーさんによっては、「あとは貴社でマニュアル読んでください」っていうケースもありますから。こちらとしては、リリース直前のかなり追い込まれた極限状態のメンバーもいるなかで、ほぼ常駐していただけたことは非常にありがたかったです。

我々が求めていた協業のできるベンダーさんということが、リプレイス前から感じられたことは、大きな安心感につながりましたね。

―貴社の皆様も、やさしく受け入れてくださって良かったです。ありがとうございます。最後に今後についてもお聞かせいただけますか。

冨田:いろいろ進めていますがお話しできる範囲で申し上げると、まず、カスタマイズサービスの統合強化を進めています。例えば、渋谷のパルコに「THE NORTH FACE LAB」という店舗があり、サイズや色を自由に細かく指定できる141CUSTOMSというカスタマイズサービスを行っています。Web上でも「THE NORTH FACE MARK ON」というカスタムプリントできるサービスを展開していますが、それらカスタマイズサービスを統合化した上で、より強化する取り組みです。これにより店舗に依存しない形でのカスタマイズサービスの提供が実現可能となり、日本中どこからでもご注文いただける環境となります。それによってカスタマイズ製品をお求めのお客様のユーザビリティの向上にもなり、Webでアプローチすることで潜在的な顧客層の開拓にも繋がると考えています。

また、分析基盤の強化も重要視しています。新しい取り組みも含めこれまで実行してきたことは、精緻に振り返りをしないと意味がありません。なぜ売上が上がったのか、なぜ優良顧客が増えたのか、それを語れないと投資の回収が半分ほどの価値になってしまうので、分析環境や人的リソースなど強化していきたいと思っています。

そして、オムニチャネルの取り組みとしては、AMSとの協業によってようやくお客様に提供したい環境が整いました。これからは、いかに早く、高い品質にアップデートしていけるかが重要な課題になっていきます。今後はオムニチャネルの強化を進めながら、その先の進化としてOMOにつなげていきつつ、結果的に2025年にEC売上目標が達成できるよう、力を尽くしていきたいですね。

―本日はありがとうございました。

【株式会社ゴールドウイン】
本社所在地:東京都港区北青山3-5-6 青朋ビル
設立:1951年12月22日
代表者:代表取締役社長 渡辺 貴生
事業内容:各種スポーツ用品の製造および販売
コーポレート:https://corp.goldwin.co.jp/
オンラインショップ:https://www.goldwin.co.jp/

SERVICEサービス紹介

ECサイト構築システムをはじめ、EC運営の課題を解決し売上アップと費用対効果を上げるソリューションをご提供します。

支援ブランド350超の実績から
貴社の課題解決をサポートします。
まずはお気軽にご相談ください。

まずは相談する
まずは相談するまずは相談する

まずは相談する