企業利益を向上させるサステナブルな取り組み
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企業利益を向上させるサステナブルな取り組み

大量生産・過剰在庫のビジネスモデルが限界を迎えているアパレル業界。社会や環境に配慮しつつ、企業の利益向上にもつながるサステナブルなビジネスのあり方について、アパレル市場のトレンドを踏まえて考察する。

注目を集める「サステナブル」

最近、よく耳にする「サステナブル」という言葉。英語の「Sustainable」からきており、「Sustain(持続する)」と「able(可能な)」を組み合わせた「持続可能な」という意味を持ち、環境や社会への配慮を示す言葉としてビジネスシーンで取り上げられる機会が増えている。 ではなぜ「サステナブル」という言葉に企業が関心を寄せるのか。その背景として、大きくは「環境問題」、「枯渇する資源」、「労働問題」の3つが挙げられる。我々は産業の発展により、容易に大量生産をすることができるようになり、人々の暮らしに豊かさをもたらした。しかし、それと同時に、大量生産→大量消費→大量廃棄という習慣が生み出され、その結果、生産や輸送、廃棄の段階で生まれる大量の二酸化炭素の排出が地球温暖化をもたらした。また、石油や石炭などの資源は今のまま使い続ければ、あと50年から140年程度で底を尽きるという*。そして、価格競争により安価での大量生産を求めたがゆえに、過酷な長時間労働や児童労働のニュースが後を絶たないのが現状だ。企業が「サステナブル」に関心を寄せるのは、これら社会的なインフラや資源、環境が整わず、悪循環を繰り返せば、近い将来、事業を継続していくことが難しくなるからではないだろうか。

出典:エネ百貨「世界のエネルギー資源確認埋蔵量(https://www.ene100.jp/zumen/1-1-6)」

アパレル業界に向けられる期待

国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によると、アパレル業界は毎年930億㎥の水を使用し、炭素排出量においても国際航空業界と海運業界を足すよりも更に多くの排出量を出しているという。加えて、ファストファッションの台頭などによって、低価格帯の衣類が大量に生産され、消費者が手軽に購入できるようになった結果、買い替えによる処分や廃棄が増えただけでなく、過剰在庫による売れ残りや行き場を失った商品が大量に廃棄・焼却されていることで、環境への影響も懸念されている。

これらアパレル業界に向けられる環境への懸念から、仏マクロン大統領が呼びかけとなり2019年に欧米を中心とする企業32社により「Fashion Pact(ファッション協定)」が発足。2025年までに25%の低負荷素材の調達の実現や、再生可能エネルギーの使用を2025年までに50%、2030年までに100%にする目標を掲げている。また、アパレル業界を牽引してきたフランスでは、2022年1月から在庫や売れ残りなどの廃棄ゼロを目指した世界初の法律「衣服廃棄禁止令」を制定するなど、海外のアパレル業界ではサステナブルな取り組みに期待が高まっている状況だ。

日本国内におけるアパレル業界の取り組み

世界的に注目されるサステナブルだが、日本国内での動きはどうなっているだろうか。まず近年の市場環境を見てみると、日本国内のアパレル供給量は1990年から2016年の間でおよそ倍増したのに対し、市場規模は2/3へ縮小しており**、供給過多により残在庫が常態化してしまっていると考えられる。売れ残った在庫で翌年に持ち越せるものはあったにせよ、トレンドを追う商品などは持ち越すこともできず、値引きされた後でも売れ残った商品は処分されることになるため、企業だけでなく業界全体の利益低下にも影響を及ぼしている。

環境省「ファッションと環境」より国内アパレル供給量・市場規模の推移

しかし昨今、サステナブルに対する海外の動きと、コロナ禍で経済がマイナス成長に傾いたことにより、国内のアパレル業界でも商品供給量をコロナ禍前の7~8割に抑えることで残在庫を出さないようにしようという意識も強くなっているという。また前述した「Fashion Pact(ファッション協定)」に続くように、日本でも2021年8月に、国内アパレル企業が中心となり、適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロと脱炭素を目標に掲げた「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」が設立された。ほぼ同時期には、消費者庁・経済産業省・環境省により、アパレル業界のサステナブル推進に向けた関係省庁連携会議も設置されるなど、国内でもアパレル業界のサステナブルな取り組みは、今後ますます動きが加速していくと見られる。

残在庫削減のためにできること

では、我々は何ができるだろうか。

「作ったら売れる」バブル景気の時代から、「低価格・大量生産で売るファストファッション」の近年を経て、在庫を大量に抱えて売上を増やすという方法では、日本国内での供給量と市場規模の関係を見ても、今以上の利益拡大を今後見込むことは難しいだろう。加えて、残在庫の廃棄による環境汚染への懸念からも、持続可能なビジネスモデルとは言い難い。

アパレル企業は今や実店舗だけでなく、自社ECサイトや複数のモール出店など、様々な販売チャネルを持っている。在庫においてもチャネルごとに拠点を分散している場合もあれば、地域で拠点が異なる場合など、様々なケースが考えられる。そうなると、実は別拠点には在庫があったのに気づくことが出来ず、売れるはずだった商品が機会を逃してしまうこともあるだろう。残在庫を出さないためには在庫を流動化させ、商品の回転率を上げていく必要があり、回転率が上がり商品が売れれば、利益へと繋がっていく。ここがスタックして残在庫が出てしまうと、売上ではなく、逆に処分費用が嵩むことにもなってしまう。適正な在庫量を考えるためにも、まずは今ある在庫の可視化と在庫の一元管理から始めてみるのもひとつの方法だと考える。昨今、在庫の一元管理は様々なソリューションもあるので、活用してみるのも良い。

どの拠点にどの在庫がどれだけあるのかをデータとして管理する。加えて、在庫回転期間を判断し、売れ筋を見極め、生産数量や仕入数を見直して、需要予測に充て、予測に応じて在庫の流動化を図っていく。これらの流れにより、現状から適正な在庫量を見出す初手にもなるだろう。適正な在庫量が見極められれば、残在庫も今より少なくなり、利益向上にもつながる。そして何より、サステナブルな取り組みにも繋がるのではないだろうか。在庫の適正化がきっかけとなり、アパレル業界全体にサステナブルな取り組みが広がることを期待したい。

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